せぬならでは手立なし
世阿弥の「花鏡」という書物に、「一期初心を忘れずして過ぐれば、上がる位を入舞にして、終に能下がらず。」とあります。
「入舞」という語の意味を、私は、「入滅する時の舞い」と解釈しています。人の命には限りがあります。だから、必ず死を迎える*。その時、若い頃の初心を一生忘れず、位が上がり続け、能が下がらないなら、その人は能の限界を見せることなくこの世界を去ることになる。その姿を私は「入舞」と解釈しています。
「花鏡」にはまた、「五十有余よりはせぬならでは手立なしと言へり。」とあります。老いて体が動かなくなれば若い頃の動きは出来ません。そのため、行わないこと以外に方法がないという状態になります。ではどうすれば良いのか。……難しい課題に取り組んでいます。
*「花鏡」に「命には終りあり、能には果てあるべからず。」とあります。