合わせようとするのではなく、しっかりと聞こうとすること
小澤征爾さんの追悼番組がありました。その番組の中で若手楽団員を指導する小澤さんは「リッスン」と繰り返しました。美しいハーモニーを生み出すために、周囲の楽器の音をよく聞け、という文脈における言葉でした。
オーケストラの仕事は言うまでもなく、美しいハーモニーを生み出すことです。小澤さんはそのために、「リッスン」=「聞け」と繰り返しました。「合わせろ」とは言いませんでした。「合わせろ」、つまり「自己を制御しろ」とは言わなかったのです。
「リッスン」は自動詞です。対象を定めず意識して聞くときに使う。だから「リッスン」とは、「よく聞くのだ、よく聞けば他の人がどうあるかが見えてくる、そして自分がどうあるか、どうあれば良いかも見えてくる、意図的に合わせるのではない、よく聞けばその結果、ハーモニーの中に存在している自分を確認することができる、美しいハーモニーを生み出している一人だと実感することができる…」と聞こえました。
それならば、美しいハーモニーというものは、他の人の音を相互に聞き合うところに、自ずと生まれてくるものとなります。全員が自分を主張しつつも決して主張し過ぎない状態といえばいいのでしょうか…いわゆる「調和」という言葉で表現できる状態が生まれるのだと思います。
しかるに、 「リッスン!」 ―調和するために― は音楽に限ったことではないと思いました。なぜなら、この言葉は日々の生活においても当てはまるはずだからです。合わせようとするのではなく、しっかりと聞こうとすること――このことは、楽しく生きるためのコツだと思います。