
わたしを束ねないで あらせいとうの花のように
「おおあらせいとう」は、桜が咲く頃に、川の土手や道の脇などに群生し青紫に春を彩る花です。青紫に咲く花としてはラベンダーや藤が有名ですが、この花に強い香りはありません。形が菜の花に似ているので青く咲く菜の花だろうくらいに、ずっと思っていました。何という花なのだろうと思っても、花の名前を確認したことはありませんでした。
今は、たとえば散歩の途中で野に咲く花に目がとまったならば、グーグルカメラを使います。…花の名前は「おおあらせいとう」でした。別名、諸葛菜(ショカツサイ)、紫花菜(ムラサキハナナ)とも言うようです。
「あらせいとう」という言葉は、「わたしを束ねないで あらせいとうの花のように」* という新川和江さんの詩の言葉として耳になじんでいます。そしてそれは時に呪文のように聞こえていました。しかるに、花と花の名前が一致したとき、「ああ、これがあの…」と思いを巡らせました。するととても愉快な気持ちになりました。
後で調べると、「おおあらせいとう」と「あらせいとう」とは別の花のようです。しかし、この花の青紫の清潔で飾らない美しさは、次に続く、白い葱の力強くみずみずしい美しさに合うと思います。新川さんがイメージしていたのは「あらせいとう」で「おおあらせいとう」ではなかったかもしれませんが、私は「おおあらせいとう」のイメージでこの詩を読みたいです。なぜなら、青紫の清楚な花は、若き日の新川さんの分身のように思えてならないからです。
* この詩は「わたしを束ねないで」というタイトルの詩で、「わたしを束ねないで/あらせいとうの花のように/白い葱のように/束ねないでください/わたしは稲穂/秋/大地が胸を焦がす/見渡すかぎりの金色の稲穂」で始まります。できれば詩集を手に取って楽しんでください。全文が掲載されているサイトもあります。

